「血腫があります。」
そして医師は続けました。
「もう一度手術をします。」
正直、その時の詳しい会話は覚えていません。
でも、「もう一度胸を開く」ということだけは理解しました。
頭の中は真っ白でした。
やっとリハビリが始まりました。
立つことも難しかった体が、少しずつ動くようになってきました。
歩ける距離も少しずつ伸びていました。
「このまま回復していくんだろう。」
そんな希望を持ち始めていた頃でした。
だからこそ、絶望的な気持ちになりました。
「また手術?」
「また最初から?」
そんなことを考えていたように思います。
病気になる前の私は、努力すれば前へ進めるものだと思っていました。
でも現実は違いました。
やっと一歩前へ進んだと思ったら、また後ろへ戻されることもあるのです。
もちろん、不安でした。
ただ、結果から言えば、この再開胸は私が想像していたものとは少し違いました。
最初の手術のように、心臓を止めて行うものではありませんでした。
だからなのか、思っていたよりは楽だったという記憶があります。
手術室から病室へ戻る途中だったのでしょうか。
ぼんやりした意識の中で、
「大丈夫ですよー。」
「大丈夫ですかー。」
そんな声を掛けられたような記憶があります。
その声を聞いていたのか、夢だったのか、それはもうよく分かりません。
ただ、一つだけ覚えています。
最初の手術の後は、ほとんど記憶がありません。
でも、この時は違いました。
創部が痛かった。
もちろん時間が経っているので記憶違いかもしれません。
それでも、「痛かった」という感覚だけは今でも残っています。
人生は、一直線には良くなりません。
少し前へ進んだと思ったら、また止まる。
また後ろへ戻る。
この時の私は、そんなこと知る由もありませんでした。
でも今振り返ると、この出来事は、その後の私の人生を象徴していたような気がします。

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