少し昔の話になります。
倒れる前の私は、どこにでもいる普通の会社員でした。
同じ会社で20年以上働き、それなりに責任のある仕事を任され、管理職も経験しました。
ただ、決して「仕事が生きがいです」と胸を張って言えるタイプではありませんでした。
むしろ、できることなら働きたくない。
宝くじが当たったら会社なんて辞めたい。
そんなことは、何度も考えていました。
正直に言うと、仕事は得意ではありませんでした。
周りには優秀な人がたくさんいました。
自分より理解が早い人。
判断が速い人。
説明がうまい人。
先を読んで動ける人。
そういう人たちを見ていると、「自分はなんでこんなにできないんだろう」と思うことも少なくありませんでした。
後輩がどんどん成長して、自分を追い抜いていくように感じることもありました。
それでも、会社には通い続けました。
新しい仕組みを考えたり、トラブルに対応したり、困っている人の相談に乗ったり。
得意ではないなりに、何とかやってきたつもりです。
そして、それなりに評価もしてもらってきました。
今振り返ると、不思議なものです。
仕事が好きだったわけではない。
仕事に大きな自信があったわけでもない。
それなのに、私の中ではいつの間にか、仕事が自分の価値を支えるものになっていました。
会社で役割があること。
誰かに必要とされること。
毎月給料が入ること。
社会の中に、自分の居場所があること。
当時は、そんなことを深く考えたこともありませんでした。
でも、後になって分かりました。
仕事を失いそうになったとき、私は仕事だけでなく、自分自身の価値まで失いそうになったのです。
仕事以外では、体を動かすことが好きでした。
ジムに通ったり、マラソン大会に出たりもしていました。
速いランナーだったわけではありません。
筋肉隆々だったわけでもありません。
それでも、体力にはそれなりに自信がありました。
少なくとも、自分が大きな病気をして、人生が大きく変わるなんて考えたことはありませんでした。
50代になると、「まだ若い」と言われることもあります。
一方で、「もう若くない」と感じる場面も増えてきます。
でも当時の私は、年齢について深く考えていませんでした。
60歳までは普通に働く。
その後は少しゆっくり暮らす。
そんな、ごくありふれた人生設計を疑うことなく過ごしていました。
明日も今日と同じように続いていく。
そんなふうに、どこかで信じていたのだと思います。
でも、その当たり前は、ある日突然終わりました。

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