その子が我が家に来た頃、
私は在宅勤務をしていました。
病気から復職してしばらく経っていましたが、
以前のような働き方にはまだ戻れていませんでした。
そんな中で始まったのが、
仕事の合間の散歩です。
もちろん最初はその子のためでした。
家の中だけでは退屈です。
少しでも外の空気を吸わせてあげたい。
歩かせてあげたい。
だから仕事の手を止めて外へ出ます。
今までの私なら、
昼休みもパソコンの前にいたと思います。
仕事をしている。
ネットを見る。
休憩する。
また仕事をする。
そんな一日だったでしょう。
でも犬がいるとそうはいきません。
散歩へ行く時間になると、
こちらを見ています。
「そろそろ行きませんか?」
と言わんばかりです。
仕方ないな。
そう思いながら外へ出る。
でも不思議なもので、
帰ってくる頃には少し気分が軽くなっていました。
病気になってからというもの、
私は家の中で過ごす時間が増えていました。
体力の問題もあります。
仕事のこともあります。
気付かないうちに、
外へ出る理由が減っていたのだと思います。
その子は、
そんな私を毎日のように外へ連れ出しました。
もちろん本人にそんなつもりはなかったでしょう。
ただ散歩へ行きたかっただけです。
それでも結果として、
私は毎日歩くようになりました。
空を見上げるようになりました。
季節の変化を感じるようになりました。
病気になって失ったものはたくさんあります。
でも今振り返ると、
その子が連れてきてくれたものも、
たくさんあったような気がしています。

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