人生は、ある日突然変わる。
今ならそう言えます。
でも、当時の私はそんなこと考えたこともありませんでした。
明日も普通に会社へ行き、普通に家へ帰ってくる。
そんな毎日がずっと続くものだと思っていました。
あの日も、特別な一日ではありませんでした。
いつもと変わらない日常でした。
だから、その日が人生の境界線になるなんて想像すらしていませんでした。
最初に感じたのは、痛みではありません。
「なんか変だ……。」
そんな感覚でした。
何が変なのか、自分でもよくわかりません。
でも、とにかく普通ではない。
そう思いました。
そして立とうとしました。
立てませんでした。
別の部屋にいた妻を呼ばなければ。
そう思い、必死に向かおうとしました。
でも、私の記憶はそこで途切れています。
後から妻に聞いた話では、私は途中で倒れ、その勢いで頭を壁にぶつけていたそうです。
壁には大きな穴が開いていました。
その音に驚いた妻が部屋から飛び出し、すぐに救急車を呼んでくれました。
私は時々意識を取り戻していたそうです。
救急隊員からの問いかけにも答えていたらしいのですが、その頃の記憶はほとんどありません。
自分の人生なのに、その時間だけが切り取られてしまったようです。
次にはっきり覚えている場面があります。
目を開けると、私はベッドの上にいました。
看護師さんが私の体を拭いてくれていました。
「ここはどこなんだろう。」
「何が起きたんだろう。」
そんなことをぼんやり考えていた記憶があります。
その時はまだ、自分がどんな病気で、どれほど危険な状態だったのか理解していませんでした。
後になって知りました。
病名は、急性大動脈解離 Stanford Aでした。
命に関わる病気です。
でも、その時の私にはそんな実感はありません。
ただ、「なんか変だ」と思い、妻のいる部屋へ向かおうとして、その先の記憶がないだけです。
後になって振り返ると、私の人生はこの日を境に二つに分かれました。
「倒れる前」と「倒れた後」です。

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