退院の日は、うれしかった。
もちろん不安もありました。
でも、それ以上に、
「やっと家に帰れる。」
そんな気持ちだったと思います。
病院を出れば、少しずつ元の生活に戻っていく。
体力も戻る。
仕事もできるようになる。
以前と同じ毎日が待っている。
私は、どこかでそう思っていました。
入院中は、歩ける距離が少し伸びるだけでうれしかった。
自分で身の回りのことができるだけでも前進でした。
だから、このまま回復していくものだと信じていました。
でも現実は、そんなに単純ではありませんでした。
退院したからといって、病気になる前の体に戻るわけではありません。
体力は落ちていました。
以前なら何でもなかったことが負担になります。
「もう治ったんでしょう?」
そんなふうに思われることもあるかもしれません。
でも、自分の中ではそう簡単な話ではありませんでした。
病院では、周りはみんな患者さんでした。
看護師さんも、お医者さんもいました。
困れば助けてもらえる環境でした。
ところが家へ帰れば、日常生活が始まります。
自分で考え、自分で動かなければなりません。
それが思っていた以上に大変でした。
この頃の私は、まだ知りませんでした。
本当に向き合わなければならない相手は、大動脈解離そのものではなく、
「病気になった後の自分」
だったということを。
今振り返ると、私の人生は退院して元に戻ったのではありません。
退院した日から、新しい人生が始まっていたのです。

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